どうしても電池式の腕時計というものは、1ヶ月に数秒から数十秒ずれていくものです。これを月差○秒と説明書や仕様書に書かれていたりしますが、1ヶ月で20秒ずれたとすると1年で4分もずれることになります。4分違うだけで電車やバス・待ち合わせに遅れそうになりますし、いちいち時計が正確かどうか調べて合わせるのも手間がかかります。
時計はズレるもの
世界にある電池で動いている「置時計」「掛け時計」「腕時計」「目覚まし時計」、CD/DVDプレイヤーに付いているものなど、必ずズレが生じます。これはどんなに高性能な腕時計や、高級ブランドの腕時計でも必ずズレてしまうものなのです。
出典:DW-5600HR-1JF G-SHOCK
例えばCASIO(カシオ)のG-SHOCKの場合、「精度:平均月差±15秒 」と記載されています。これは電池式で動くごく普通の腕時計です。
出典:WIRED SEIKO
同じような価格帯で電池式のモデルを見てみます。セイコーのワイアードですがこちらも「精度:平均月差±15秒」と書かれています。
出典:INDEPENDENT CITIZEN
シチズンのインデペンデントですが電池式で精度は「+-20秒/月」と書かれています。
これらは全て電池式で、どのブランドでも精度は15秒・20秒のラインが多くありさほど違いはありません。しかし中には「曜日機能」や「カレンダー機能」などを搭載している商品も多く、それらでズレが発生した場合は何日か、何曜日か、何時何分かの3種類を合わせる必要があり、更には秒数も合わせると結構な手間がかかります。
日頃から腕時計をしているなら操作方法は分からなくもないですが、何時何分かを合わせるのが精一杯で曜日や秒の合わせ方となるとマニュアルを見ないと知らない場合が多いのです。しかしズレた状態のままだと、時間に遅刻するかもしれませんし仕事をする上で不都合が出てきます。そういう場合、日本に住んでいれば他の選択肢が出てきます。
電波時計とは?
電波時計とは現在の時刻を定期的に受信し、常に合致した時刻を表示してくれる時計のシステムです。
出典:標準電波とは? SEIKO
このように日本では福島と九州の2箇所から電波を発信し、日本全国をカバーしています。10万年に1秒しか誤差が出ないと言われており、電波時計付きの腕時計の場合、時刻合わせの必要がありません。場所によっては韓国や中国でもこの電波が届く場合があります。
「マルチバンド5」や「マルチバンド6」といった機能を搭載している時計もあり、これは日本の他に中国・北米・イギリス・ドイツの標準の電波を受信できることを言います。
では他の国に言ったらどうなるかというと、やはりズレが生じます。月差で少しずつすれて行き、日本に帰ってきたら電波時計の場合自動修正されます。
GPS時計とは?
前述したマルチバンド6の場合、日本の他でも時刻を合わせてくれますが、その他の対象外の国では内臓電池による電池頼りとなります。その為少しずつズレが出てきますが、それを防ぐのがGPS式の腕時計です。
出典:OCEANUS CASIO
カシオではオシアナスのGPSが有名です。地球を26億ポイントに分割し、正確に位置を特定しているという驚異的な性能です。
出典:ASTRON SEIKO
セイコーは世界で初めてGPS腕時計を出したメーカーです。世界中どこにいても時刻が合う事を目指して作られた事で知られています。
出典:CITIZEN
シチズンのエクシードやアテッサは3秒でGPSをキャッチして時刻あわせが出来る超高性能腕時計です。
このように各社GPS腕時計に力を入れ、それぞれに独自の特色を追加して個性を出しています。
1番高性能なのはやはり「光格子時計」です
電波時計は10万年に1秒しか誤差が出ないほど正確ですが、世界で最も誤差が出ないのが「光格子時計」です。これは6500万年に1秒しか誤差が出ない超高性能で、もはやズレがあるのかないのか分からないくらいの性能です。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)と国立大学法人東京大学(以下「東大」、総長:濱田 純一)は、それぞれが独自に開発を行ってきた「光格子時計」を60kmの光ファイバ(NICT:東京都小金井市-東大:本郷キャンパス)で結び、双方の時計で生成される周波数の比較実験を行いました。その結果、これらの光格子時計が6500万年に1秒の精度で一致した時を刻むことを確認し、光格子時計により、16桁に到達する高い精度が実現できることを世界で初めて実証しました。
情報通信研究機構と東京大学が開発したもので、精度を実証した時計で最も精度が高いと言われています。それぞれのチームで別々に開発した時計を、光ファイバーで繋げて精度の実証が実現しました。
もちろん実生活には電波時計で十分すぎるので、電波時計以上の精度のものは出てきませんが日本の研究は世界に誇れる素晴らしい成果を上げています。