病院の診察で胸をトントンしてもらうと何が分かるのか

体の調子が悪くなったときに病院へ行き、お医者さんに診察を受けます。その際に必ずといっていいほどに行われる診察に、胸をトントンと叩かれます。これは一体何の意味があるのでしょうか、実はコップの水や樽の中身を当てるのと同じ原理で行われています。

病気の発見の仕方

病気を発見する方法として、患者さんからの問診を行います。問診とは、診断する際に参考にするため、お医者さんが患者さんに症状や調子などを聞くために行うことです。

例えば朝ごはんは食べたのか、どこか痛いところは無いのか、いつから調子が悪くなったのか、など聞かなければ分からないことを確認します。確かに見ただけである程度の推測はできるかもしれません、今流行っている症状やその人の今までのカルテがあれば傾向なども分かってきます。しかし実際は分からないことも多く、少しずつ調べていき症状を確認するのです。

胸をトントンする理由

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胸の辺りをトントンと叩いて診察をすることがあります。これは何を確認しようとしているのでしょうか。これは「打診」といって指先や機器で胸や背中などを叩く行為の事を言います。

実は「」を調べていて、叩いたことによる音の跳ね返りを調べているのです。

内科の診察で基本となるのは古来の4つの診察手技です。それは、①視診、②触診、③打診、④聴診 の4つで、体の不調を訴えて医院を受診された方だけではなく、健康診断の内科診察でも必ず行う診察法です。

出典:内科末廣医院

見て触れて叩いて聞く、これが内科の基本で診察時に行われる手法です。聴診器で心臓の鼓動を聞いたりしますよね、詳しく検査をする前の初期段階としてこういった検査方法を試みて症状を探し出します。

打診は樽と似ている

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樽の中に水がたくさん入っているか、少ししか入っていないか、それは叩けば分かるものです。樽を開けなくても叩いたときの音で量を測ることができ、それは医療現場でも応用されています。

コップに水を入れて叩くと音がします、さらに水の量が異なるコップを複数用意すると叩いてみると楽器のように様々な音色を醸し出してくれます。これは水の量によって音が異なったり、コップの大きさや形状によって音が変化するからです。

ですので医療の現場でも、何回も叩いてみてこっちはどういう音がするのか、ここはどういう音になるのかと判断します。

打診法の原理は、肺の中には空気がいっぱいあってコーン、コーンと高く響きますし、心臓や肝臓では細胞や血液がぎっしりと詰まっていてコツコツと鈍く響きます。この性質を利用して、心臓や肝臓は腫れていないか、肺に血液や膿がたまっていないか空洞はできていないか、お腹が張っているのはガスのせいかなどを見極めることができます

出典:公益財団法人 日本心臓財団

元々はオーストリアの酒屋の息子の「アウエンブルッガー」が発見したそうです。樽を叩くことで中身の水量がどれくらい減っているかを判断していたことから、後に医師にもなった人物です。

医者はエスパーや超能力者ではない

天才的な医者の場合は、叩くだけで心臓や内臓に異変があるというのがすぐに分かるそうです。しかし通常は打診して分かるのは違和感くらいなもので、その後に精密検査をして判断します。レントゲン検査やMRI、血液検査など、どこにどういう症状ができ、どの部分に異常があるのかはそれを見て判断される場合がほとんどです。

この箇所に違和感があるからこの症状が疑わしい、こっちの症状でこう出ているからこの症状に近い・・・これらの様々な要素を組み合わせて、この症状だと判断しています。

犬や猫の場合は本人が伝えることができないので、どうしても症状の特定の難易度が上がってしまいます。それに比べて人間は伝えることができるため、様々な治療に関するヒントを医者に教えることができます。お互いの思いを話し合い、共に症状を和らげれる方向に進めていきましょう。