子供の予防接種はなぜ任意なのか、国立感染症研究所と厚生労働省のデータを確認しながら、受ける人と受けない人がいるのを考えよう

大人で予防接種というと「インフルエンザ」の予防接種が広く行われています。金額も3,000円から4,000円程で1度だけ流行る前に注射すれば、かかりにくい・もしくは重症になるのを軽くすることが出来るというものです。しかしこれは任意であり、予防接種しない方もいます。子供の予防接種には、「定期接種」「任意接種」がありますが、なぜ受ける人と受けない人がいるのでしょうか。

なぜ予防接種が存在するのか

予防接種は子供が生まれてから1歳になるまで、毎月のように注射をする必要があります。幼稚園や保育所(保育園)・小学校に入学・入所するに備えて、必要である予防接種を打ち病気を未然に防ぐことが大事で、国が定めている予防接種があります。

赤ちゃんを病原菌・感染症から守る為に、予防接種は存在します。細菌やウイルスを弱め、毒素を無毒化したりするものですが、大人とは異なり体への負担は小さいものとなっています。ワクチンを接種することで体の中に免疫が作られて、病気から防御してくれるのが予防接種の本来の役割です。

子供の予防接種の種類

子供の予防接種にはどのような種類があるのでしょうか。NIID国立感染症研究所の資料を見てみましょう。

参考:予防接種スケジュール NIID 国立感染症研究所

【定期接種】

・Hib(インフルエンザ菌B型)
・肺炎球菌(13価結合型)
・B型肝炎(水平感染予防)
・DPT-IPV I期(IPV I期)
・BCG
・麻疹/風疹混合(MR)/はしか
・水痘
・日本脳炎
・DT II期
・HPV(ヒトパピローマウイルス)2価/4価
・定期接種(B型疾病)/インフルエンザ/肺炎球菌(23価多糖体)

【任意接種】

・B型肝炎(母子感染予防)
・ロタウイルス(1価/5価)
・おたふくかぜ
・A型肝炎
・破傷風トキソイド
・骨膜炎菌(4価結合型)
・黄熱
・狂犬病

2006年4月1日以降、定期の予防接種としては麻疹・風疹混合生ワクチン (measles-rubella:MRワクチン)の接種が開始となり、 同年6月2日から下記の年齢での2回接種となりました。

第1期、第2期を過ぎてしまうと定期の予防接種として受けられなくなってしまいます。 小学校の入学前に接種がすんでいるかどうかを確認しましょう。

出典:小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを! NIID 国立感染症研究所

種類を見てみると実にたくさんあり、上記のように麻疹・風疹ワクチンは、2回接種と決められているものもあります。接種の中には「定期接種」「任意接種」に分かれています。どこかどう異なるのでしょうか。

定期接種と任意接種の違いとは?

定期接種とは、予防接種を受けなければいけない接種の事です。定期的な予防接種は各都道府県の市町村長が行わなければなりません。それは「予防接種法」によって明記されています。ほとんどが無料で受けることが出来、副作用が出た場合は国によって規定されていて対応してもらえます。

第五条  市町村長は、A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて、当該市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し、保健所長(特別区及び地域保健法 (昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項 の規定に基づく政令で定める市(第十条において「保健所を設置する市」という。)にあっては、都道府県知事)の指示を受け期日又は期間を指定して、予防接種を行わなければならない。

出典:第三章 定期の予防接種等の実施 電子政府の総合窓口e-Gov

詳しい接種時期は「予防接種手帳」に記載されています。転居や転入をしたタイミングで、受け取っていない方は、お住まいの市区町村にある保健センターや保健所母子保健・感染症課へ問い合わせてもらいましょう。

では任意接種とは何でしょうか。任意接種とは、予防接種法に定められていない希望者が各自で受けるかどうか判断できる予防接種のことです。

任意という事は、受ける人もいれば受けない人もいます。それは薬でもあるように「副反応」が出る場合もあるからです。

定期の予防接種以外の予防接種による健康被害について、薬局開設者、病院若しくは診療所の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師その他医薬関係者が、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止する観点から報告の必要があると認める場合

出典:予防接種後副反応疑い報告制度 厚生労働省

定期予防接種以外で副反応が出た場合、医療関係者は健康被害の拡大を防止する為に報告をする必要があるものは、報告しなければなりません。そのため、任意の予防接種を受ける人もいれば、受けない人もいるのです。

予防接種を受けるメリット

感染症にかかると、赤ちゃんの体への負担は大きく症状が重くなったり後遺症が出る場合もあります。それらを防ぐ為に予防接種を受ける方が多いのです。

定期接種のワクチンは、国や自治体が乳幼児に接種を強くすすめているワクチンです。接種を受ける側にとっては経済的負担の少ない(ほとんどの地域で無料で受けられる)ワクチンです。
一方、任意接種ワクチンは、接種するかどうか接種を受ける側(赤ちゃんなら保護者)に任されているワクチンですが、決して医学的に重要度が低いワクチンというわけではありません。
例えばロタウイルス胃腸炎は、激しい下痢や嘔吐による脱水で点滴や入院が必要なケースもあるなど、重症化すると大変な病気です。

出典:定期接種と任意接種について ジャパンワクチン株式会社

定期予防接種はほとんど無料で受けることが出来るので、基本は皆さん受けるでしょう。任意接種はお金がかかりますが、予防するための必要がある症状に対して作られています。重症化を予防する上では接種することで意味はあると捉えることもできます。

予防接種を受けないメリット

予防接種は赤ちゃんの体内にワクチンを入れるため、一時的に症状が出たり重い副反応が出ることもあります。

任意接種の中に「ロタウイルス」というものがあります。これは胃腸炎の予防・神経系の合併症の予防として作られたものです。しかし副反応・副作用は存在します。

最も注意すべき副反応は、腸重積症です。どちらのワクチンでも服用後に腸重積症を発症しています。内服後、特に2週間は、腸重積症の初期症状に注意して下さい。

出典:医療法人 小泉重田小児科

腸重積を起こすのはではないかと言われていましたが、生後60日以内に初回のワクチンを接種した乳児では腸重積は起こらなかったという報告(Simonsenら報告)があり、生後3カ月までは腸重積は起こりにくいと考えられています。生後6カ月以上になると腸重積になる可能性があるのですが、ロタウイルスワクチンをしなくてもある頻度で腸重積は発生し、ロタウイルスワクチンで頻度が増えないという報告もあります。

出典:医療法人社団こどもクリニック 中山医院

このように「ロタウイルス」だけを見ても、受けたことによって何かしらの症状になる可能性があります。ただしあくまで可能性の域ですのでメリットもデメリットも存在します。

メリットとデメリットを把握することが大事

任意接種はそれぞれメリットとデメリットがあります。それを受けたことによってどういう症状や病気に効果があるのか、どういう副作用や副反応に注意する必要があるのか。かかりつけのお医者さんから説明を受け、納得できない場合は見送るなど納得してから受けるようにしましょう。セカンドオピニオンや他の医院やクリニックで、話を聞くというのも有効です。

あの時受けていたら良かった、受けなかったら良かったと後で後悔しないように広く情報を集めることが大事です。赤ちゃんを出産したばかりのママさんは、勉強することや覚えることがたくさんあります。夫や親・兄弟に協力を仰いだりママとしてどう行動するかを考え、赤ちゃんを病気から守りましょう。