服でも下着でも靴下でも「シルク」は日本人に大変人気があります。シルクとは絹のことで、蚕の繭から取れる動物繊維のことです。シルク100%配合とか、少し値段は高いですが高級素材というイメージがあります。だからといってポリウレタンやポリエステルなど素材によって、用途によって良し悪しはあるので一概にどれが1番良いとは言えません。
蚕と蜘蛛の違い
蚕と言うと糸を作り出してくれて、蜘蛛は出ると厄介な虫というイメージですよね。蚕は人間が手助けをしてあげなければ生きていくことは出来ません。自分で餌を調達することも出来ないので、丁寧に優しく育てる必要があります。最近では個人で蚕を飼う人もいて、蚕を育てるキットも見かけます。
蜘蛛は野生でたくましく生きることが出来、糸に絡ませて餌を調達したりします。日本中どこにでもいるのが特徴です。
蚕の糸とは?
蚕が吐き出す糸は繭・絹糸で、様々な製品の材料にされています。農薬がついていない桑の葉などを食べて、育てます。
カイコは卵からかえってから徐々に大きくなり、繭を作るまでに体長で15倍、体重で10000倍成長します。
大きくなったカイコの体の中には、絹糸腺という一対のタンパク質の製造工場があります。
出典:日本絹の里
1秒当たり1センチ位糸を吐いて、2日間朝晩休まず1キロ以上の繭糸を吐き出して糸を作ってくれます。蚕と言うと日本では糸を作る工場で飼われている事がほとんどですが、海外では野生で生息している蚕が多くいます。そこでは国によって若干種類が異なり、伝統芸能や民族衣装などその地域独特の使われ方をしています。
シルクは汗を良く吸い取るし群れません。夏には涼しく、冬は温かいという万能な素材なのです。ただし水にあまり強くないため、耐久性は高くありません。虫に食われやすく変色しやすいので他の素材の方がいいという方の理由はこのあたりでしょう。
蜘蛛の糸はすごく丈夫
蚕は優しい糸を出しますが、蜘蛛の糸はかなり頑丈です。強くて頑丈なだけでなく、しなやかさも兼ね備えているという代物です。しかし蚕とは異なり、作る量は雲泥の差があり少量です。
そこでバイオの力を借りて、蜘蛛の糸を蚕に出してもらうという研究が進んでいます。
蚕に蜘蛛糸を吐かせること。蜘蛛糸は、魅力的な繊維であるのに、量産が難しく利用されていない。量産出来ない主な理由は、蜘蛛が肉食でも生きた餌しか食べず、共食いするので、大量飼育が困難なためである。
出典:新規バイオファイバーの産生・蚕に蜘蛛の糸を吐かせる研究
蜘蛛の飼育は難しく、少量しか糸が取れないため中々難しいとのこと。遺伝子の構造を分析し、蚕に蜘蛛の糸を吐かせる研究が信州大学で行われています。
日本の科学者らが、クモの糸のたんぱく質をつくる遺伝子を組み込んだ新品種のカイコが作る糸「スパイダーシルク」を用いて、履き心地が良く、丈夫な靴下を作成した。信州大学の中垣雅雄教授らは、10年に及ぶ研究の末、カイコにクモの遺伝子を組み込むことにより、クモの糸のたんぱく質10%が含まれた絹糸を開発した。
蜘蛛の糸を蚕から出すことに成功し、これは「スパイダーシルク」と名付けられました。しかしコストがかかるのか、手間がかかりすぎるのか、スパイダーシルクの靴下などは世間では売っていません。
ついに完成、蜘蛛の衣服
アウトドアブランドメーカーとして有名な「ザ・ノース・フェイス」が共同で制作したのがこのパーカです。
「QMONOS(TM)」の開発を手がけてきた同社によれば、柔軟で強度のあるクモの糸は、鋼鉄の340倍の耐久性がある、世界で最もタフな繊維のひとつと言われているんだそう。
QMONOS(TM)は、微生物発酵によって原料となるタンパク質フィブロインを生成。
出典:【世界初】クモの糸を使用した新素材を「THE NORTH FACE」が発表!
なんと鋼鉄の340倍の強度を誇るとのことで、世界で最もタフな繊維として注目を浴びています。柔軟でありこれだけの強度を持つ繊維はそうそうありません。製品化に向けて進んでいるそうで、世間で蜘蛛の糸で作られた頑丈な素材に会える日も近いかもしれません。