昆虫採集や虫取りなどで人気がある昆虫に「トンボ」がいます。昔はよく緑が多い原っぱや川辺などに飛んでいましたが、最近は少なくなってきました。愛らしい飛び方と季節を感じさせてくれる昆虫ですが、他の昆虫には無い素晴らしい目を持っています。
トンボは他の昆虫とどう違う?
トンボは世界に5,000種類と言われ日本でも200種類ほど確認されています。その中でも特に有名で人気のあるのが「オニヤンマ」でしょう、大型でパワフルな飛び方をします。
トンボの最大の特長が目です。トンボの目は「複眼」と言われ、他の昆虫とは異なっています。簡単に言うと小さな目が集まって出来た集合体です。人間でも右目と左目で見える位置が異なるように、トンボの無数の複眼は全て見える位置が異なります。
そんなに見えるとどれがどれか分からなくなりそうですが、そこはうまく繋ぎ合わせて視界を判断しているのがすごいところです。その複眼の数はおよそ2万個と言われ、様々なところへとピントを合わせています。
およそ270度という視野角を持っており、真後ろ以外はほとんど見ることが出来るというすごさです。目は球面上に丸まっているため、目を動かさなくても左右の奥深くまで見ることが出来るのです。
トンボの複眼からヒントを得たカメラ
トンボの複眼構造からカメラのレンズと結びつけた研究もされています。大阪大学の教授が高機能のデジタルカメラを開発しました。
トンボの目は、小さなレンズが数万個集まった構造をしている。レンズを半球状に並べることで、複眼全体では180度以上の広い視野角を得ている。だから、背後から近づく鳥などをすぐに察知することができる。もし、一つのレンズで同じ視野角を得るとしたら、非常に大きなレンズが必要になるという。
ただ、谷田が注目したのは視野角の広さよりも、複数のレンズにすることで、極めて薄型のカメラが実現できる点だった。
同時に異なる画像を得て、その情報を解析して合成し様々な用途への応用が期待されているそうです。どのようにデジカメの画質が進化するか楽しみです。
携帯電話のカメラも複眼の時代へ
カメラが1眼ではなく、2眼の携帯電話に付属するカメラが発売されます。ファーウェイ・ジャパンのフラッグシップスマホ「HUAWEI P9」です。
カメラが増えていくのは、それらを「センサー」として活用するためである。例えばHUAWEI P9の場合、2つのカメラのうち片方はモノクロのセンサーを使っており、カラーのセンサーに比べ、形状や輪郭・光を正確に把握できる。そのデータをモノクロ写真として楽しむこともできるが、カラーで写真を撮影する場合にも写っているものの形状をより正確に把握し、ソフトウェア処理で融合させることで、写真のクオリティを単眼のものよりさらに上げることができる。
カラーで撮影するのとモノクロ(白黒)で撮影するのとでは、得意不得意の差で出来上がりが異なります。モノクロは形状・輪郭・光に強いのでそれらの良いところを合わせて合成することで、今までカラーの単眼で撮影していた画像や写真よりも、1段階上のクオリティーで撮影を楽しむことが出来ます。
複眼の自動ブレーキシステムが評価を上げている
自動ブレーキシステムと言えば、カメラやセンサーで危険を察知してブレーキを踏んでくれるというシステムです。
軽自動車では初めて、複眼カメラで監視する自動ブレーキシステムを追加搭載できるようにした。
出典:スズキ「スペーシア」を一部改良 複眼カメラの自動ブレーキを追加可能に
スズキの軽自動車「スペーシア」に複眼カメラが搭載されました、単眼より良いのでしょうか、今後は複眼の自動ブレーキシステムが主流になっていきそうです。
形を認識するにはカメラが必要であり、また形から人間を認識するためにもカメラが必要である。
カメラといっても解像度の高いものは価格が高くなるし、またモノクロかカラーかでも大きく価格が異なる。
逆に単眼のカメラでは距離の測定が難しいため、スバルでは複眼のステレオカメラを採用している。
出典:国交省の大きな勘違で「日本の安全技術は大きく出遅れた」!?追突被害軽減自動ブレーキの歴史を振り返る
単眼のカメラより複眼のカメラの方が、対象物との正確な距離の測定がしやすいとのことです。確かにいろんな角度から見る事によって、その角度では捕らえきれない構造を捉えることが出来ます。
このようにトンボに着目した複眼の構造は、携帯電話から自動車へと様々な技術に応用されています。カメラを多くすることによって少しでも正確に物事を捉えることが出来るので、トンボの無数の複眼はものすごい正確に対象を捉えていそうです。