今もなお東日本大震災時の影響で、福島県の原子力発電所が危ない状況になっている。廃炉作業に向けて作業が続いているが、人力や機械では中々難しい。そこで昆虫の出番と言うわけだ、サソリとヘビとゲンゴロウが投入されたというのである。といっても、ここでいう動物は昆虫そのものではなく、サソリタイプのロボットだ。
ロボット工学はますます発展している
日本のロボット工学の発展は目覚しく、日々進化していっている。特に最近では、アンドロイドの発展が目覚しい。人間国宝の落語家の桂米朝アンドロイドとマツコのアンドロイド「マツコロイド」なども、まるで本人が話しているかのようなリアリティーがある。暗闇で見ると判断がつきにくいくらいだ。対話・接客・介護の分野でも注目され、高島屋で活躍する「ミナミちゃん」や介護の場でペットのように癒してくれるペットロボなども話題を集めた。
ロボットが手話で会話
聴覚障害者が話すときに使用する「手話」ですが、動きが複雑で人間でも覚えるのは時間がかかる。大阪大学・芝浦工業大学・湘南工科大学が共同で開発した手話ロボットの動作が注目を浴びました。
女性型の人間酷似型ロボット(アンドロイド)で、名称は「地平(ちひら)アイこ」である。おじぎや簡単なあいさつに加えて、手話などの動作を行える。
ただし手話は難しく、ロボットで表現するには難しい表現が多いそうだ。
落ち着いてゆっくり動かすロボットなら。正確な精度を上げれば時間をかければ作れそうだが、スポーツや移動が必要なロボットは難しい。
ロボットが人と卓球ラリーをしたり、統率がとれたダンスを披露したりする――。オムロンや村田製作所がユニークなロボットを開発している。それを可能にしたのは、センサーによる計測技術とそれを使ってロボットを制御する技術だ。ロボットが我々の生活に溶け込む近未来の実現に向け、エレクトロニクス業界が一役買いそうだ。
モニターで見てセンサーで相手の動きを捉える、卓球台で球の起動を正確に追えるそうだ。球の起動を分析し、ラケットの位置や向きを瞬時に変更する。ゲームセンターで遊ぶ時や、選手が1人で練習するときに使えそうな感じだ。その内にテニスなど大きなスペースで動かすものも出てくるのだろうか。
原発のような大事故に遭遇したとき、ロボットは活躍する?
東日本大震災で被害を受け放射能などが散乱した原子力発電所、このような非常時に動けるロボットが実は日本にはほとんど無かったというのだ。人間が重い物を軽々と持ち上げることが出来る、パワー型の装着タイプのパワードスーツや、人間の行動を楽にする機械は研究されていた。しかし、災害用などへの予算が少なく、あまり熱心に国内では作られてこなかったのだ。
原発事故作業ロボットが注目されたのが東海村の核燃料工場「JCO」で起きた臨界事故。これに対応したのが旧科学技術庁(現在は文部科学省に組み込まれている)と通産省それぞれ約15億円、約30億円をかけて、放射線測定ロボットや原子炉建屋内のドアの開閉、スイッチ操作などを行うロボットを開発した。
だが世間の関心も薄れるに伴い、予算が使い果たされると自然消滅してしまった。結果、ロボットは能力不足のまま、これらロボットは防災訓練以外に登場する機会も無く、維持費もかさむことからお蔵入りになった。
阪神淡路大震災などは陸上で起こった地震で、レスキュー隊や自衛隊などの活躍で瓦礫さえどければ助けられたり、救助活動が出来る物が多かった。しかし、福島などの原発周辺では危険な環境に、人間では足を踏み入れられない場所を想定した研究は疎かだった、まさかここまでの事態が起こるとは想定していなかったのだろう。
なぜ今まで原子炉クラスの災害を想定したロボットが作られてこなかったかは、きちんとした原因がある。それは費用対効果の面だ。
企業側や開発者にも問題がある。高度で少量のロボット開発は多額の投資を必要とする割には収益に結びつかない。研究開発者も自分たちの関心のあるものを作ることだけに目を向け、どう利用するか頭が回らない。
国が主導して作るので無い限りは、民間企業や大学が自分達で予算を決めて開発することになる。そうすると慈善事業でやるわけにはいかないので、どれくらい売り込んだりできるかを検討する。そうすると、災害が起きていない場合は全く売り上げに結びつかないのだ。これでは会社の事業として、ロボットを作るのには限界があるし、作る気にもならないだろう。明確なロボットを使う場所(日本で危険な地帯)が無かったからだ。
日本には高性能ロボットを作る技術はある
作らないからといって、作れないわけではない。日本でのロボット技術は既に世界ではトップクラスの性能を誇っていて、本腰を上げれば対応することは可能なのだ。
出典:技術研究組合 国際廃炉研究開発機構
名前はげんごROVという。まるで「げんごろう」のように水中でスイスイ泳いで、カメラで散布状況を確認する昆虫型だ。汚染水の中を泳ぐことができるそうだ。
左がサソリ型のロボットで、東京電力の福島第1原発の2号機へ投入されるものだ。
右がヘビ型ロボットで、配管内の形状をしているのが特徴。
では、これらの昆虫型ロボットはどれくらい苛酷な環境に耐えられるのだろうか。
JCO臨界事故(1999年)では、6~20シーベルトの放射線を浴びた作業員2人が死亡したが、2号機の格納容器内は毎時70シーベルト程度ときわめて高い。「サソリ」は積算1000シーベルトまで耐えられ、毎時100シーベルトなら10時間作業できる。
人間が到底入ることの出来ない領域で、10時間作業が出来るそうだ。他にも、4本足で歩き、階段を上り下りする犬型もあり、段差で躓いて戻ってこれない対策も取られている。
機械でも放射能には強くない
機械でも放射能を浴び続けていると耐久力が減り、使い物にならなくなってしまう。特に内部の部品は消耗品が多く、電子部品の回路などはなかなか厳しく故障しやすい。
最大の敵はやはり放射線だ。内蔵カメラや「頭脳」に当たる電子部品は不可欠だが、最も放射線の影響を受けやすい。電子部品の中にある半導体が放射線の影響で壊れ、正常に動かなくなるからだ。
サソリ型の機械には「タングステン」が使われているそうだ。タングステンとは金属の事で、スウェーデン語で「重い石」という意味だ。熱に強くて硬くて、重いのが特徴だ。昔テレビ番組で矛と盾という、絶対に穴を開けれる、穴が開かないというのでこの金属の名前が出てきたのを覚えている。かなりの硬いパワーで他を圧倒していたのだ。
それがこのロボットに使われているのだから心強い、しかし万能な物はこの世にはないので耐久力と言う意味で壊れてしまわないか心配だ。過去には途中で壊れて回収できなくなったロボットもいて、ハードとソフト、つまり外側の材質と内側の材質の2つが重要となる。
ちなみにロボットを原子炉建屋で使うには通信設備が必要だが原子炉には存在しない。無線通信の中継器ロボットで中継し、ロボットを操作するためのロボットを用意し、更にそれを機械で操作するという複雑なシステムになっている。全て最終的には、人間が操作しなければいけないからだ。
人工知能のAIを搭載したロボットなど将来の技術革新に、期待する一方で最後は結局人の手でやらないといけないという繊細な部分も多いだろう。